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この本がすごい! 2017年(読書ふりかえりシリーズ)(073)

2017年は年始、年末にまとまった時間がとれたので

手のかかる本(ページが多い、古い、専門的)がこなせて

読書家的には実りの多い一年でした。

 

今回はできるだけ「癖のある本」を挙げますので、年末年始のお供にどうぞ。 

自民党―政権党の38年 (中公文庫)

自民党―政権党の38年 (中公文庫)

 

戦後政治の歴史は自民党の歴史。

戦後の8割以上の期間、政権の座に座り続けた怪物ですので、

政治史が自民党研究に偏るのも仕方の無いところです。

 

戦前の大政翼賛会時代から自民党結党、下野までを描く。

大政翼賛会から始まるのは、戦後の公職追放の説明ができないからで

戦前のパート単独でも面白いです。

 

扱われる時代は派閥政治の全盛時。

宏池会が元々「池田勇人くんを首相にする会」だったり

第一、第二派閥が対立したときにキャスティングボードを握るのが第三派閥だったりと

最近のニュースからは知り得ない話がたくさん出てきます。

 

伝えることから始めよう

伝えることから始めよう

 

経営者の書いた本はとんとご無沙汰でしたが、この本は良かった。

ジャパネットたかたの創業者が初めて書いた本。

(ライターが聞き書きした本は何冊か出てます)

 

出てくるエピソードが初出ばかりで全部面白いのですが

団体営業からカメラ販売、独立、ラジオショッピング進出と

 

時代の流れに乗っていく姿が印象に残りました。

 

冷血 (新潮文庫)

冷血 (新潮文庫)

 

 「調べた事実だけ書く」というスタンスで殺人事件のルポを書いたら

600Pを超えてしまったという本。

 

何の非もない一家四人が前科持ちの犯人二人組に虐殺される話なのですが、

この本の凄さはディティールの細かさ。

被害者一家や街の様子の描写だけで200P近く使いなかなか殺人が起こらない。

 

加害者側の生い立ちから殺人を犯す動機、逃避行から逮捕の瞬間まで

家族や一緒に収監された人、看守、ヒッチハイクでたまたま拾った人や

逃避先で結婚を約束した人、たまたまガソリンを入れに行った店の店員など

関係ありそうな人が次から次へと登場する。

 

どうやってこの本を書いたのか、考えるだけでめまいがしてきます。

 

事件は1959年、本書の発行は1966年です。出版からもう50年ですね。

こういう労作こそこの先何十年、何百年と読み継いでいかないとな、と

心の底から思います。

 

豊田泰光108の遺言

豊田泰光108の遺言

 

読売新聞のコラムニストが「文章が抜群にうまい」と絶賛していたのが

豊田泰光さん。日経新聞、週刊ベースボールのコラムでおなじみ。

 

コラム集を読み返すと、確かにうまい。特に話の展開。

さすがは野球評論で殿堂入りしただけはある。

(文章の上手下手は原文を引用しないと説明できないので勘弁してね)

 

豊田さんは引っ張り上げる人がいなかったのか、割に自由に評論されてたので

野球にちょっと興味があるレベルの人にも熱心なファンがいました。

(日経新聞を取ってるのは豊田さんのコラムのためだ、と言う人がたくさん存在した)

 

白球の視点

白球の視点

 

田村さん(ベースボールマガジン社元常務)も

野球分野のコラムニストとして著名な方でした。

私が熱心に週ベを読んでたときには、すでに名物連載でした。

(時節柄、引き分け撤廃ネタをよくやってました)

 

こういうコラム集は時事ネタ扱いなのか、発売からあっという間に絶版になります。

(上記二冊もすでに絶版)

 

エッセイ集はロングセラーが多いけどコラムはすぐに絶版。

コラム好きには辛い国です。

 

北の無人駅から

北の無人駅から

 

あの「バナナの人」こと渡辺一史さんの新刊。

今年読んだノンフィクションではダントツの一位です。

 

「観光地としてのおなじみの北海道」じゃない実態を描きたかったと

 フリーライターの立場で8年かけて取材したのが本作。

 

ある秘境駅に住んでた両足のない漁師を探したり

北海道の農業であえて「米作り」をテーマにしたり

寒村の村長選挙とその後の市町村合併のドロドロをドロドロしたまま書いたりと

中に入り込んで信頼関係を作らないと取れない情報ばかり。

骨のある、読ませる部分が多い。

 

そうそうこの本、ソフトカバーなのに800Pもあります。

御堂筋線で読んでたら左手がつりました。

この本も(テーマ的に)すぐに絶版になりそうですし、

大部の本こそ電子書籍にして欲しいと思うのは私だけではないでしょう。

 

こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち (文春文庫 わ)

こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち (文春文庫 わ)

 

バナナの本も簡単に説明しておきます。

 

ボランティアを口先で使って、文句も言うしAVも見るし映画を見に外出もするしと

難病(筋ジス)ながら全くかわいそうじゃないのが鹿野さん。

鹿野さんとボランティア、支援者を近くで見つめながら

それはそう、おかしいところはおかしいと考えながら書いた本です。

 

障害者支援・介護の分野では超有名な一冊なので 

まだお読みでない方はぜひ。

 

 

南朝研究の最前線 (歴史新書y)

南朝研究の最前線 (歴史新書y)

 

歴史関係なら「応仁の乱」「北条高時と金沢貞顕」で決まり!なのですが

もう一冊紹介しておきますね。

 

南朝というと「暴君」後醍醐天皇が失政を重ね建武政権を崩壊させ…と

散々な言われようなんですが、そうとも言い切れないよ、という本。

 

楠木正成の出自が実は東遷御家人だ、新田義貞が足利家とは家格が全然違う、

北条高時の遺児が建武時代以降も戦い続けて最終的に南朝方についてるなど

最近固まってきた説を中心に紹介してます。

 

最近の本(2016刊)で新書、各論考は短めですので、気軽に読めると思います。